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今回のテーマは初心者~上級者までの殆どのDTMユーザーが一番悩んでいるであろう『自作曲の音のショボさはミキシングスキルが上がればカバーできるのか』という問題を掘り下げていこうと思います。
というのも東京DTM作曲音楽学校の入学説明会へ参加して下さる方のアンケートの殆どに「ミキシングスキルを向上させたい」という悩みが多々寄せられたためです。
が、タイトルにもある通り悩み自体がそもそも間違いなんですね、言い方を変えるならば音がショボくなる本当の理由を見抜ききれていないといったところでしょうか。
それではいってみましょう!
その1:最初に結論から ~ミキシングスキルを向上させたいという人達の本質的な勘違い~
長文になってしまうので先に結論から書きます。
音がショボい最大の理由はそもそものサウンドチョイスのセンスがダサいからです。
ミキシングにサウンド向上を求めようとするアマチュア作曲家やDTMユーザーは、プロの現場ではエンジニアが魔法のようなテクニックや機材を駆使し、ダサい音がたちまちCDで聞くような格好良くセンス溢れるサウンドになるのだろうとイメージしがちなのですが、クリエイターから預かった原音の方向性を著しく変えてしまうようなことをしたらエンジニアとしては大失格ですし、その行為は最早アレンジやトラックメイキングと呼ばれる作業となってしまいます。
つまり、サウンドが格好良い曲はミキシングをする前の時点で既にかなり格好良いんですね。
それでは1つずつ段階を経て解説していきましょう!
その2:プロはミキシング前の時点でどのレベルまでトラックを作り込んでいるのか
こればかりはここにサンプル音源を載せることはできませんが、以前私のレコーディング現場に同行してくれたアシスタントが私が家で作ってきた音源を聞いて「MIX前の音源なのに売り物と殆ど変わらない・・・」と絶句していました。
アシスタントとして同行させるくらいですのでそれなりの音楽センスや知識、実績がある人間です。そうした人間でさえ絶句してしまうくらいプロは自宅で殆どの方向性を作り上げてしまいます。
そして10数年前と違うことは、今やプロもアマチュアも同じ機材を使えるということ、つまり使い方次第で誰でもリリース直前レベルのサウンドが自宅で作れてしまうということに他なりません。
ミキシングというのはあくまで音を整える作業です、つまりショボいサウンドのままスタジオに持っていったとしてもショボい音のままバランス調整だけされて戻されるのがオチでしょう。
その3:そもそもミキシングとは何をすることなのか
そもそもミキシングというのはクリエイター(作曲家、編曲家、トラックメーカー、サウンドプロデューサー)とは全く別の職種であるエンジニアさんの仕事です。
勿論楽曲や現場によって施す作業は全く異なってきますが、先述した通り、いくらショボい音だと思ったところで音色を根底からいじってしまうことはありえません。
私はよくミキシングを化粧に例えます。
テレビに出てくる超綺麗な女優さんやモデルさんも当然皆さん化粧をして出演されていますよね、でも化粧を落としてすっぴんにしたところでとてつもなく綺麗なことは疑う余地がありません。(特殊メイクがあるじゃないかとか意地悪なこと言わないでね;;)
すなわちミキシング前のトラックの状態というのは化粧前のすっぴんの状態に非常に近いものがあります。
つまり音がショボいと嘆く殆どのアマチュア作曲家やDTMユーザーは、サウンドチョイスというすっぴんの状態が酷いままミキシングに移行してしまうからいつまで経ってもサウンドが格好良くならないのです。
もちろんちゃんとしたエンジニアさんにお願いすれば多少は綺麗に整えてMIXをしてもらえるでしょうが、作曲した本人にわかる程度の違いくらいで、不特定多数から賞賛を得られることはほぼないと言ってよいでしょう。
その4:サウンドチョイスのセンス向上のために必要なこと
答えはとても簡単です、常にその時代の格好良いとされるサウンドが使われた楽曲のインプットを続けること。全てはこの地道な作業しかありません!
そして様々な楽器のサウンド、シンセサイザーの音作りの仕組み、トラックメイキングのためのエフェクトを熟知した状態で、頭の中だけで音の設計図を組み立てられる状態までにスキルを上げることです。
その上でインプットする大量の音楽を次々と分析し音のレシピを沢山作っていくのです。
参考までに2014年の後半のヒットメーカー達のトラックメイキングは、Trap色が更に濃くなった808をルーツにしたビートメイキング、隙間を生かしたチルな雰囲気、13年のJustin Timberlakeのアルバムに影響を受けた特徴的なリバーブ、声のループが主流になってきています。
上記のことが誰のどんな曲のことを指し示しているのかすぐにイメージできない限り、今っぽい格好良いサウンドを作ることはできないでしょう、やはり最も大事なことは絶えずインプットしていくことなのです。
その5:音のショボさを無視しても良い場合
しかし、自宅のデモやプリプロ音源のサウンドがショボくても全く気にしなくていい場合もあります。
使用するDAWソフト、ソフトシンセ、プラグインに関してはプロもアマチュアも現代では大差ないと述べましたが、未だにプロの現場の機材に大きく差を付けられている宅録機材があります。
それはレコーディングに纏わる機材、コンデンサーマイク、HA(マイクプリ)、各種アウトボード類、コンソール、レコーディングブースといったハードウェアに纏わる機材です。
これらの機材は主に生楽器や歌をレコーディングするために使われます、所謂「録り音」と呼ばれるものが宅録の品質とは大幅に変わるわけです。
これらの機材(全部あわせたら何百万、何千万)を通した録り音を宅録用機材だけで再現することは不可能ですし、逆に言えば後ほどレコーディングスタジオにてちゃんとした機材を用いて録り直す予定があるのであれば、自宅でいくら音がショボかろうがこの部分は無視できる問題というわけです。
その6:音がショボい原因を自分1人で見付け出すために重要なこと
その4とその5をまとめるならば、DTM機材を使ったトラックメイキングで音がショボくなるのは自分の腕のせい、生歌や生楽器系の録り音がショボいのは機材のせい、ということになります。
つまり音のショボさに直面した際はこの2点のどちらが原因か追究することをまず最初に考察する必要があるということです。
またレコスタでの録り音は自宅での録り音と具体的にどう違うのか、実際のレコーディング現場での経験がなければ、どちらに問題があるのか考察ができないことも付記させて頂きます。
その7:じゃあMIX前のトラックメイキングはどこまでやればいいのか
私の制作方法を例に取らせてもらいます。
まずどのトラックもフェーダーをいじります、1にも2にもまずはフェーダーにてレベル調整です!いきなりリバーブ?ありえません!レベルを下げるだけで十分距離感は出せますし、フェーダーだけではもう追い込めないというところまでいって初めてセンドにリバーブ立ち上げてみるという程度で十分です。
続いてPANです。こちらもフェーダーとベクトルは同じく、2つのスピーカーの中での位置を決める重要なパラメータです。
上記2点に関してどういう基準に基づいて配置すべきかと言えば、もしそのトラックをそのまま再現するライブが行われたとしてステージ上がおかしなことになっていないか、です。
もう少し噛み砕きましょう、歌モノなのに歌よりレベルの大きいベースがいるとすると、それをライブで再現するならばセンターに立つのはボーカリストでなくベーシストになってしまいますよね?
またピアノの低音が左chから出ているのに高音が右chから出ている場合(ピアノのソフトシンセではよくある設定)、オーディエンスはピアノの中に顔を突っ込まない限りそうした聞こえになりません。(更に厳密に言えばグランドピアノはプレイヤーから見て左から低音が鳴っているわけではありませんが)
もちろんそうしたイレギュラーを効果的に使うプロのトラックメイキングも存在しますが基本をわかった上で崩しているから耳心地の良さは失われていないはずです。
そしてその次はコンプ(ダイナミクス調整)とEQ(余計な周波数カット)です。
コンプは音量のバラつきを抑えるため、コンプでなくボリュームのオートメーションを書くこともあります、あくまで聞こえのダイナミクス差をなくす作業です、聞こえは殆ど変わりません。
そしてEQはハイパスフィルター等で余分な低域をカットとし低い周波数帯の役割をリズムトラックに集中させます。
この程度で十分なのです。
繰り返しますが、やはり勝負はどの音を使うか選んだ瞬間に決まるということです。
私はいつも、エンジニアさんの仕事がなくなるくらいチョイスの時点で曲を完成させてやろう、という意気込みでやっています。もちろん必ずお願いしますが。笑
その8:何故このような大間違いがまかり通ったままなのか
教育現場にいる大多数のレッスンプロはプロの現場経験が殆どないため、雑誌の記事、憶測、発信元の不確かな又聞きをそのまま生徒に伝えてしまうことに問題があります。
本来ならばそのままスタジオでダビングし直せば完成される良い曲を不用意にいじってしまったり、トラックメイキングのスキルアップをさせないままミキシングの授業をしてしまうDTM、作曲系学校の多さは弊害というべき事態です。そしてそういったところで作曲系講師が行うミキシングの授業も実際のプロの現場で行うこととは掛け離れた内容が多いです。
今後も実際の現場とは掛け離れた通説を1つずつ 解消していけたらと思います。
終わりに
東京DTM作曲音楽学校ではレコーディングスタジオの中でも国内最高峰のスタジオにてレコーディングを体験できます。
また通常授業内でも1日何十万もするスタジオと同様のHAとコンデンサマイクを使った機材の違いを確かめられるレコーディング実習の授業を設けています。
読者の方で自分の曲の一体どこに問題があるのか分からないという方は2mixとパラデータを送ってもらえたらじっくり解説させて頂きます!
また来る3/15(日)、3/29(日)、4/4(土)、4/9(木)に、
長時間の授業がセットになった第6期生の入学説明会があるのでそちらにお越し頂いても勿論構いません!
今回のトラックメイキングやミキシングだけのテーマに限らず、コードや調性音楽等の音楽理論に関する内容もこれでもかというくらいにご用意しております!
ご予約はコチラからどうぞ!
本文中の宣伝はウザいので最後にちょろっとだけ。笑